21時の珈琲

キャリア迷子の企画職ワーママ(育休中)が考える、育児、仕事、日々の記録。

知らぬ間に私も時間を奪われていた。『モモ』を読みました

f:id:mameco98:20220913144437j:image

どんな本?

モモ / ミヒャエルエンデ 作。

「時間」をテーマにした、児童書であり哲学書。

この本から得られること

  • 時間の使い方を見直すきっかけ(心が豊かになる活動に時間を使いたい)

こんなアナタへおすすめしたい

  • いつも時間に追われている大人

 

あらすじ

廃墟となった円形劇場に住む、少女モモ。

モモがいると、なんだか優しくなれて、想像が豊かになって、毎日が楽しい。そんな不思議な力を持つモモは、街の人にとって大切な存在になっていきます。

ある日、街に「灰色の男たち」が現れ、街の人々の様子がおかしくなります。大人も子どもも、せかせかと、忙しくなっていくのです。「時間」を奪われた街の人たちを救うべく、モモは冒険に出ます。

 

すべての大人たちの物語

私たちは、毎日忙しく生きています。

「ちゃんとした暮らし」「良い暮らし」が幸せに繋がると信じて、いかに効率的に日々を過ごせるかを考えています。

さらに「しっかりした母に見られたい」「優しいママに見られたい」「オシャレな人に見られたい」といった自己実現欲求も加わって、ますます忙しい毎日です。

時間を盗まれた街の人々は、まさに現代に生きる私たち大人自身。

大人たちが時間を盗まれてから、子どもはこうこぼします。

「子供に構ってくれる大人がいなくなった。」

なんて心に突き刺さる、冷静な評論でしょうか。

 

「うまくやる」のが、カッコイイのか?

時間を短縮しようとすると、どうしても効率的な処理が求められます。

それが、俗にいう「うまくやっている」状態であり、「クール」でもあります。

しかし、一番最初に時間を盗まれた人を見て、モモの友人・ジジは
「どんなことにもヤツ一流の考えを持っていた(のに、今のヤツはそうではない)。」
と言います。

「うまくやる」と、画一的になってしまう。老いも若きも、エリートもそうでない人も、「その人なりの一流の考え」というのは尊い。どんな人の考えだって尊い。

なのに私たちは、一番効率的な思考を「カッコイイ」と思ってしまう。ああなりたいと思ってしまう。それって、豊かなんでしたっけ?

 

子どもとの時間を「無駄」だと思いたくない

お金を稼ぐこと、私というアイデンティティを確立するために没頭すること。それも立派です。

ですが、友人、コミュニティ、趣味、ぼーっとする時間は、果たして、無駄・浪費なのでしょうか?

家族や子どもと過ごす時間は?

本を読みたい、勉強したい、ブログ/インスタに投稿したい、オシャレをしたい、ダイエットがしたい…そのために、子どもと遊ぶ時間なんてない。って、突き詰めると、思ってたんです。認めたくないけど。

だけど本当は、子どもと遊んでいる時間を、「無駄な時間だ、身にも金にもならない、節約しなきゃ」と思いたくない。

子どもと過ごす時間に、意味なんて求めなくていい、ただそれだけでいい、って思いたい。

 

ママも自分の人生もがんばりたい

「マズローの欲求5段階」というものがあります。人間の欲求を5段階のピラミッドに表したものです。

最下層は、「生理的欲求」。人間が生きていくための根本的な欲求を指します。これが満たされたら、次の「安全の欲求」を求める。その次は「社会的欲求」、すなわち、どこかのコミュニティに属したいという考えです。その次が「承認欲求」。すべての欲求が満たされたら、頂点の「自己実現欲求」があります。人間は、次から次へと欲望が湧いてくる。そして最後の「自己実現欲求」は満たされるのが難しい、特に、私たち現役世代には。

だから、もっとがんばらなきゃって思っちゃうんです。効率的に時間を使って、捻出した時間でアイデンティティを確立しようと。だって、巷では、「時間がない、は、甘え。時間は作り出すものだ」と言われているんでしょう?

この欲求は本当に厄介だと思います。だって私たちは、「自分らしく、良く生きる」ことを目標に今まで育ってきたから。だけど、子どもを産んだ今、それより大事なものがあるって、本当は知っているんです。ただ、流れ来るSNSのフィードの前では、「私だけなにもやってない」と焦るしかなくて。

 

「モモ」は児童書ではありますが、私はこれからも何度も読み返すでしょう。今回はamazonオーディブルでの視聴でしたが、愛蔵版(紙)も購入したいと思います。大変オススメです。

 

★★★★★(価値観を変えた傑作)