21時の珈琲

キャリア迷子の企画職ワーママ(育休中)が考える、育児、仕事、日々の記録。

【4・5・6歳~小学生】プリキュア・プリンセスが好きな女の子を読書好きにする本

保育園に通う5歳年中の娘は「本が好き」と言います。

それは、自分で読める力がついてからのこと。「自分はスラスラ読める」という自信があるからなのです。

 

 

 

 

本を一人で読むために必要なこと

娘は、年少になってひらがなが読めるようになってから、一人で絵本を読むことが増えました。

幼児が一人で本を読み、自信をつけるために必要なことはただひとつ。子どもが興味を持てる本を用意し、やる気スイッチを入れることです。

 

「やる気スイッチ」を入れるには?
やる気スイッチグループ著、『9歳までの自分力教育』によると、「自分で行動できる子になるためには、目の前のことに本気になること。やる気スイッチが入れば、本気になる」とあります。

 

娘の場合は、ディズニープリンセスやプリキュアなど、かわいらしいものが大好きでしたので、そういった本を与え続けました。

 

中でも、娘に自信をつけさせた本があります。

年中でこれは読めないでしょ

ところがどっこい…娘は自分で読み、見事に自信を付けました。

 

5歳で25話ひとりで読めた本

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西東社の「めいさくだいすき」シリーズ。

 

オススメポイント

✔ グリム童話やアンデルセン童話などの名作が25話

1話5ページほどで、読み聞かせも苦にならない

✔ 漫画のようにキラキラした挿絵

✔ 4シリーズあるので気に入ったら買い足せる

 

中身はこんな感じ。イラストと文章のバランスが程よいです。

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プリンセスやプリキュアが好きなお子さんには間違いなくグッとくるはず。

 

我が家は2シリーズ購入しましたが、娘が気に入ったので全シリーズそろえる予定です。

 

 

どれを買ったらいいか

幼児の読書……最初に買うなら、『ドキドキときめき』か『キラキラかんどう』をおすすめします。

 

『ドキドキときめき』

白雪姫、人魚姫が収録されているので、プリンセス好きな女の子にも入りやすい。

海外童話としてはブレーメンの音楽隊、ヘンゼルとグレーテル、オズの魔法使いなどがあります。

空想好きな子に大変オススメ。娘はこの本から買い集めました。

 

 

『キラキラかんどう』

プリンセス系は、シンデレラ、眠れる森の美女、ラプンツェルがあります。

海外童話としては、アルプスの少女ハイジ、フランダースの犬、赤毛のアン。こちらの方が、『ドキドキときめき』より少しお姉さんかな?

 

『ウキウキたのしい』

プリンセス系はあまりないけれど、世界の名作が入ってます。

私の大好きな『若草物語』が入っているのが、高得点!

 

『ワクワクゆめみる』

プリンセス系では『美女と野獣』が入っていますが、それ以外は『魔法使いの弟子』『ロミオとジュリエット』『真夏の世の夢』など、幼児には難しい作品が。

その分、小学校中・高学年までなが~く使えそうですね!

 

プレゼントにもおすすめ

今回は、プリンセスやプリキュアなど、かわいいものが大好きなお子さんなら絶対ハマる本を紹介しました。

クリスマスやお誕生日プレゼントにもおすすめです。

我が家の娘にとっては、外出先には必ず持っていくお気に入りの一冊になっています。

逆に、科学の本とかは興味ないのよね…。

子どもの興味と、親が学んでほしい領域の重なりをいかに作るか、これから模索していきたいと思います。

 

(ちなみに)娘は年少に上がる少し前からひらがなを読めるようになりました。
こどもちゃれんじを習っていたので、教えずとも一人で読めるようになっていてビックリです。

カタカナは、ちゃれんじの教材がくるより早く読めるようになりました。人間は、文字への興味を持ったらひとりでに獲得する生き物なのかも…ですね!

 

 

 

育休中に読んだ本のベスト9を考えてみた(2022年)

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2022年に読んでおもしろかった本の感想を書こう…!と思ったまま、今年ももう1か月が経とうとしています。時の流れ早すぎィ…!

 

 

 

読書習慣が戻った1年でした

2022年はたくさん本を読みました、というか、私の好きな活動で育児中にやれるのが本を読むことくらいしかなかった。

 

本当は、オケに乗ったり、演奏会に行ったり、美術館に行ったりしたいんだけどねェ……

 

読書というのは大変便利で、1分あればできる活動です。

読書習慣が戻ってきたのは9月。息子が生後5か月になり、育児にも慣れてきたタイミングでインスタに読書投稿をスタートしてからでした。

4か月間で22冊読みました。それまで月に1冊も読めてなかった私からしたら、すごく読んだ方なのです…!

今年は70冊以上、可能なら100冊読みたいな。

 

2022年ベストナインを考えてみた

そんなわけで、2022年に読んでおもしろかった9冊を考えてみました。

 

1.ファクトフルネス

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ファクトフルネスとは――データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣。賢い人ほどとらわれる10の思い込みから解放されれば、癒され、世界を正しく見るスキルが身につく。(紹介文より引用)

 

コロナ禍におけるトイレットペーパー騒動を思い出した話。一時期トイペなくなりましたよね。

 

東京大学の鳥海不二夫教授らが発表した論文によると、「デマツイートを見た人より、訂正ツイートを見た人の方が過剰な購買をした」とのこと。訂正情報に触れた人たちは、「デマ情報を見た人がトイレットペーパーを買い占めるかもしれない」と思って、購入に走ってしまったのではないか、という分析が出ました。

 

デマに踊らされなかった『賢人たち』に、いったい何が起きたか。この本を読んで、いくつかの本能にあてはまるのでは、と思いました。

  • 恐怖本能
    トイレットペーパー不足への恐怖
  • パターン化本能
    「情弱はデマを信じるはずだから」という分類に対する思い込み
  • 焦り本能
    「早く買わなきゃ、なくなっちゃう」という焦り

これらの本能は、本能であるが故に対処法を知らないとすぐ顔を出すし、抑えるのに苦労します。

ただ、本能のくせを知っていればこの世はそんなに怖くないとわかる、そんな本でした。

(ちなみに、この本の初版は2018年2月、コロナ前です。今後発生しうる事象にも使える普遍的な世界の見方だなぁと驚きました)

 

 

2.多様性の科学

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2.多様性の科学

「三人寄れば文殊の知恵」ということわざがありますが、まさにそういうこと。優秀な人物が一人いるより、平凡な人物が十人いた方がイノベーションを起こしやすいという本です👩🏻🧑🏼👩🏿‍🦱

 

私が育休前に所属していた組織は、平均年齢40歳の「昔ながらの日本企業」であります。

部長もいるような会議で「どんな意見でも歓迎」なんていっても、若手は委縮して言い出せない。でも、あとでこっそり聞いてみると、「実はこんなこと考えてました」と教えてくれる。言えばいいのに!すごくいい意見だよ!と言うと、びっくりした顔をしていました。

 

この現象を本作では「決して最初から多様な意見がないのではなく、表明する場がないのだと表現されています。「わざわざ自分が言わなくても、リーダーならすでに知っているだろう」という気持ちが働く、とも。

 

この本では、多様な意見を出すためには相応の環境が必要と説きます。

多様性を引き出す環境

集団には「支配型ヒエラルキー」「尊敬型ヒエラルキー」の二種類があり、後者の方が革新的なアイディアを生みやすい。

 

今考えれば、常に時間がない中での人数が多すぎる会議。「そんなことで時間使うなよ」という空気が流れていたのは事実でした。

忙殺されると効率を求め、「一見良く見える」意見以外は検討できなくなる。そうすると若手も空気を読んで発言できなくなってしまう。

 

でも、組織の勢いは畢竟、若手のやる気だと思っています。彼らにのびのび、「仕事って楽しい!」と思ってもらえるように、ある程度「余白=あそび」を残しつつ、リカバリー可能な失敗をいくつか経験させてあげたいなぁと、組織改革に向けて勇気が湧いてくるような一冊でした。

 

 

3.池上彰の行動経済学入門

最近ブームの「行動経済学」の入門編。

感想についてはこちらでまとめていますので、割愛。

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4.西洋絵画の教科書

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インスタで一番いいね!をもらえた一冊。絵の意味がわかって、美術館巡りが楽しくなります。

 

もっと、絵をわかるようになりたいなぁ。そんな一心で手に取りました。

わたしのような初心者に向けてやさしく説明してくれます。

名画が名画たる所以
描かれている主題と隠されたモチーフが告げるメッセージ
持ち物からその人物が誰かを推察すること
この絵のどこを見たらいいの?というような難しい絵の解説

今まで、画材を知って何になる?と思っていたのですが、その画材が生まれた背景を知ると、その時代にタイムスリップしたような感覚がして、一気に目の前の絵画が「教科書の世界」から「自分と同じ、人間らしさをもった作者が描いたもの」に見えてきてオモシロイ。

 

 

5.掃除婦のための手引き書

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アメリカ生まれメキシコ育ちのシングルマザーの自伝的小説。彼女のものを見る目、表現にする力に目を見張る小説。日本人には出せない味わいだと思います、間違いなく去年のイチオシ。

 

幸せとか不幸せとか、そういう尺度の話ではなくて、ただ痛いほどにまっすぐ真実を描く。ガリガリと身を食われるような感覚になります。

感想を書くのに時間がかかったし、読むのはその倍かかった。何度も同じ文章を反芻して、想像して、自分のものにするのが難しかったです(そして、ものにできない言葉もあった)。

 

最初の数編の感想は、「よくわからない」。
半分くらいで、「これは劇薬だ」。
でも、さらに読み進めると、実は彼女の作品に攻撃性はなく、むしろ大らかで、優しくて、生への活力で溢れていることがわかりました。

 

 

6.モモ

私も時間泥棒に時間を奪われてるなぁと自らを省みる。

くわしくはこちらに書きました。

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7.窓ぎわのトットちゃん

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好奇心旺盛なトットちゃんは、小学校一年生で退学になった。新しく入学した自由な校風の「トモエ学園」で、トットちゃんの人生は花開く。

言わずと知れた黒柳徹子さんの大ベストセラーである、自伝的小説。

 

「子どもを尊重する」という言葉の中には、子どもを小さな大人として接する他にも意味があるのかも、と、この本を読んで気づいたのです。

 

子どものペースがある

子どもはあらゆることが不慣れだから、あらゆることに時間が必要。ごはんを食べる、靴を履く、お散歩に出かける、気持ちを切り替える。手先の不器用さはもちろんのこと、一つ一つに五感を使っていたり、思慮が及んでいたりする。

 

子どもにはそれぞれ個性がある

人間は生まれながらに個性を持っていて、それは親の思惑とは無関係で備わっているものなのに、私たち大人は世の中の枠組みや自分の価値観に子どもを無理やりはめようとしている。

賢い、お友達と仲良く遊べる、積極的、気持ちが安定している、リーダーシップがある…いろんな「能力カタログ」があって、そこからえいっとピックアップして子どもにインストールしようとしている。

 

みずみずしい黒柳徹子さんの筆致にも驚きました。本当に子どもが書いたんじゃないのかしらと思うほどです。加えて、トットちゃんが書かれたのは著者が40代のころ。おそるべし、黒柳徹子さん…!

 

しかも、なんと、ご本人の朗読をaudibleで聴くことができます!

1990年に発売されたカセットテープ版を、audibleで配信しています。ご本人の朗読は最高です!トットちゃんが目の前で走る、回る、しゃべる。

快活な東京弁も気持ちいい。本では「くださった」なのに、徹子さんは「くだすった」と読んでいる、そういう機微が随所にあって、トットちゃんが生きたころの世の中の様子まで伝わってくる。素晴らしい朗読でした。

 

▼育児中の私はaudibleのおかげで読書量が格段に上がりました

 

惜しむらくは、カセットテープ版はいくつかのエピソードを抽出したものだということ。いつか、全文をご本人の朗読で拝聴したいものです。

 

 

8.蜜蜂と遠雷

聴く芸術の音楽を文学として描き切った恩田陸さんに脱帽。

くわしくはこちらにて。

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9.おいしいごはんが食べられますように

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2022年芥川賞受賞。多様性の認容を、価値観のバトルにしては誰も幸せにならないと感じさせる一冊。

 

プライベートな関係なら、価値観が合う人を選べます。けど職場にはいろんな人がいる。

本文中にあるように、「誰でもみんな自分の働き方が正しいと思ってる」。多様性のある職場、というと聞こえがよいですが、ふたを開けてみると「価値観のバトル」になっています。

 

芦川さんは、心も体も弱い。そのこと自体は別にいいと思うんです。生まれつき虚弱体質の方がいるように、心だって風邪をひきやすい方もいる。

ただ、「強いか弱いかを比べる戦いだった。当然、弱い方が勝った」ではいけない。そんな報われない社会にしてはいけない。

かといって、必ず強者が勝つというのも、民主主義の発展が水泡に帰することになります。

 

過度な自己責任論を諌める社会は、いきすぎると「弱いが勝つ」になる気がします。

いろんな価値観があるけど、これから先、価値観を勝負の世界に引き込まない・強者と弱者という分断を起こさないようにしないとな、と、社会構造を考えさせられる難しい作品でした。

 

 

2023年も本を読んでいきます

小説・ビジネス書・育児書・教養書・歌集など、それぞれのジャンルごとに読み方も違うなぁ~とわかった2022年。

 

今年はもっと読書のアクセルを踏みたいと思います。

その月に読んでおもしろかった本3冊は、ブログでも詳しく紹介したいなぁ。

 

最後になりますが、読書履歴はインスタグラムにて細かく記録していますので、ご興味ある方がいらっしゃいましたらフォローいただけると嬉しいです!

社会人必携!心理学×実社会=行動経済学。『池上彰の行動経済学入門』を読みました

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どんな本?

池上彰の行動経済学入門 / 池上彰

 

社会に採用されている行動経済学に基づくナッジと理論を、池上彰流の解説で読みとく。

 

この本から得られること

  • なぜ自分はこの行動をとってしまうのか?という問いに対する答え
  • 顧客への働きかけの方法

こんなアナタへおすすめしたい

  • 新人/若手社会人
  • 日常の中の雑学が好きな方

 

感想

実は無意識に他人の後押しを受けている

先日、ニュースで「ナッジ」という言葉が紹介されていました。英語で「軽く肘をつつく」、つまり望ましい行動をとるように後押しすることを意味します。

 

そのニュースでは、看護師の服を日勤・夜勤で色を変えたところ、残業が減ったと紹介していました。理由は以下です。

早く帰れそうか?業務を変わろうか?という声掛けが増えた
就業間際、医師から日勤への連絡が減った(夜間勤務者に連絡するようにした)
日勤で自分1人色が違うと、早く帰らなきゃ!と思うようになった

実は社会では、この「ナッジ」が溢れています。これは「行動経済学」をもとに作成されています。

行動経済学は新しい学問ですが、近頃ノーベル経済学賞を受賞する学者が増えたことで注目を浴びています。

 

たとえば、

確証バイアス
自分にとって都合の良い情報ばかり集めてしまう

現在バイアス
未来の利益より現在の利益をとってしまう

など、日常生活での「あるある!」を論理的に解明しています。

 

若手の頃に知りたかった理論が満載

私はプロダクト企画を仕事としているので、この本に載っていた例示はほとんど知っていて、「よくやる~!」と何度もうなづきました。

でも、ここまでくるのに紆余曲折ありました。まず、仕事では誰も理論は教えてくれません。
「なんかこういう法則がありそうだな…?」「他社もやってるということは、効果があるのかな?」と、情報を足で稼いで今に至ります。

そのプロセスが大事!と言ってくださる方も多いけれど、私自身はその時間には価値を置いてなくて、この本を読んだとき「もっと早くに出会っていれば!!」と思いました。

 

若手社会人の方たちにはぜひ一度読んでいただきたい良書です。
行動経済学の入門にちょうどよい内容を、池上彰さんが丁寧に解説してくださります。

(もしかしたらベテラン社会人の皆様には、ちょっと物足りないかもです。)

 

見破る力を持つべし

会社で、トンデモ理論を展開する方がいらっしゃいます。

そういう方は大体、数字に弱い。手元に、それなりの数値があればそれを自分の都合の良いように解釈してしまい、こちらからするとその数値が何故この結論に行きつくのかわからない、ということがありました。

数字や理論に強くなる、知っている、というのは、武器になります。

たとえば。
この本に、「手術の失敗率5%と聞くより、成功率95%と聞いた方が印象が良い」と紹介されています。

でも、数字に強ければ、この数字が同じであることに気付く。他人が用意した恣意的な数字に惑わされることはありません。

理論を知ること、数字に強くなること。これは自分を守る術でもあります。

 

悪魔の理論にもなりうる

「オプトイン」というものがあります。「(無作為で)同意したとみなす」ことです。

たとえば、ネットショッピングで商品を購入したら、メールが届くようになった。これもメール配信に「オプトイン」で同意しているからです。

池上さんは、本作で「オプトインにすれば同意を得られやすい」という事例を紹介していました。

しかし、私は仕事をする際、本当に大事なことはあえてオプトアウト、つまり顧客に選んでもらうようにすることがあります。

何も知らずにオプトインさせることは、私の「美意識」に反するからです。

 

行動経済学は、ともすれば他人を意のままに操れる「悪魔の理論」になりうると感じます。
だからこそ、私たちが自分を律して、この新しい学問を最適に使っていく人間力が求められると思いました。

 

(ここで、先日ご紹介した「世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?」と話が繋がって、読書に無駄は存在しないなぁ…と感動した瞬間でした)

 

★★★★☆(一生で一度は読みたい)
※ただし、ベテラン社会人にとっては★★☆☆☆(楽しめる)。

 

 

答えのない世界を生きるには、「美意識」が必要だ。『世界のエリートはなぜ美意識を鍛えるのか』を読みました

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どんな本?

世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 / 山口周


NYのメトロポリタン美術館で早朝行われているギャラリートークに、知的エリートと思われるビジネスマンの姿が見かけられるようになった。

なぜ世界のエリートは「美意識」を鍛えるのだろうか?答えのない世界を生きるために必要な「美意識」とは。

 

この本から得られること

直観や倫理観を磨く意義

 

こんなアナタへおすすめしたい

  • 芸術に興味がない
  • すべてに合理性を求める性格
  • 管理職

 

感想

サラリーマンの閉塞感はここにあり

新しい企画を考えても、数字の根拠を説明するのに時間を要して、結局モノにならなかったことがいくつかあります。
それが数年後、他社から出てバズってると本当にくやしい。

私には、ともすれば頑固ともいえる上層部を納得させられるだけの数字を出せなかった。
でもそれは、出しても出しても「この場合どうなる?」の繰り返しで、一向にGOを出せなかった上層部の度胸のなさもある、と、その時は思っていました。

なんでこうなっちゃうんだろ。その答えが本作にあります。

それは、「サイエンス・クラフト・アートの3者のうち、アートだけは説明できないため、どうしても負ける」から。

サイエンス=データ、クラフト=経験と読み換えるとわかりやすいです。私たちはビジネス上の意思決定をする際、どうしてもデータか経験によるロジックを根拠にしたがります。

ただ、サイエンスとクラフトによる論理、つまり「正しく理性的である」ということは、「誰がやっても必ず結論が一緒になる」ということでもあります。
そうなると、勝負は「スピードとコストパフォーマンス」になる。だから疲弊していく、というストーリーです。

 

現状のビジネスの様相を、著者は以下のように語ります。

アカウンタビリティーという責任のシステムが、かえって意思決定者の責任放棄の方便になってしまっている

そして、

画期的なイノベーションが起こる時には、非論理的ではなく超論理的な意思決定が行われている

とも。

 

これは、大変にキビシイ。

サイエンスとクラフトに則った意思決定なら、年数を重ねれば、あるいは学べばできるかもしれない。でも、アート、つまり美意識(ここでは「直感」)は、今のところ体系だった学びの手段がありません。

また、成功の確率もわからないので、失敗することも多いかもしれない。そのリスクをとってでも自分の直感を主張するのは、よっぽど自信がないと難しいと感じました。

 

自分なりのものさしを持つこと

本作での「美意識」とは、ただたんに外目を気にすることだけを意図しているのではなく、「真・善・美」のことを指しています。

人と比較するのではなく、自分なりのものさしを持ちなさい。これは、ハーバード大学での講演の一節です。

自分なりの美意識、ものさしをもってないと、エリートはコンプライアンス違反をしてしまう可能性があるからです。

昨今ニュースを賑わせている東京五輪の汚職事件ですが、角川との契約書ドラフト時点では、法務部内で「(五輪に関するコンサルタント料名目での支払いは)贈賄容疑に抵触の可能性あり」と指摘されていたにもかかわらず、その後、コンサル対象に万博等を追加することによって「要件的にはこれで問題ないだろう」と結論付けた経緯があります。

これを聞いたとき、対岸の火事ではないと思いました。ビジネスにおいて、法律ギリギリを攻める表現はよく行われるからです。私にも「これなら抵触しないから大丈夫」という経験があります。

でも、よく考えれば、真・善・美の意識があれば、これは本質的には変わっておらず、よって贈賄容疑に抵触する可能性はぬぐえないことはわかりますよね。

ハーバード大学は世界のエリートが巣立つ学び舎です。だから、ギリギリを攻めすぎると犯罪者になってしまう。それを回避するために、「自分なりのものさしをもちなさい」と話されたのです。

道徳を後付けで明文化した法律を回避することだけを目的とするのではなく、そもそもの「道徳」を守るために。

 

教養を身に着けることは無駄にはならない

アートとは、美術・音楽の芸術分野だけではなく、人文学・社会科学・自然科学といったリベラルアーツも含まれます。つまり、教養です。

私はこの本を読むまで、教養=生きるための処世術、くらいにしか思ってませんでした。

ただ、私自身は美術や音楽が好きだし、インスタグラムをやるぐらいなので読書も好きです。でもこれは、お金にならない、ただの趣味だなぁ、よく生きるための手段だな、と感じていました。

教養を磨くことは、ビジネスにも役に立つ。この本でそれを指摘してもらって、私が好きなものが認められたような気がしました。

芸術も、読書も、良いですよー!そんなのムダ、と思うビジネスパーソンのみなさま。これから「○○の秋」、ぜひに新しい分野やチャレンジしてみていただければと思います。

 

★★★★(人生で一度は読みたい)

 

 

アマチュア音楽家こそ読みたい。『蜜蜂と遠雷』を読みました

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どんな本?

蜜蜂と遠雷 / 恩田陸 作

音楽を舞台にした青春群像劇、なんだけど、実は全世代で楽しめる、人生を映す物語。

この本から得られること

音楽を愛する心を改めて実感。

音楽という、聴くことでしか味わえない芸術を文字だけで書ききる恩田さんの文章力に脱帽。

こんなアナタへおすすめしたい

  • 音楽が好き
  • もう一度青春したい
  • さわやかな気持ちになりたい
  • 直木賞受賞作を読みたい

 

あらすじ

近年、注目を集めている「芳ケ江国際ピアノコンクール」。新しい才能が世に出るきっかけであるこのコンクールに向けて、若いコンテスタントたちは自分の音楽を磨いていく。

自宅にピアノを持たない無名の少年。かつて天才少女と呼ばれCDデビューを果たしたものの、現在は国内で自由気ままにピアノを弾く20歳の女性。音大出身だが今は楽器店勤務の妻子持ち。ジュリアード音楽院で学ぶ、優勝候補の青年。彼らは音楽を通して人生を表現する。果たして優勝は誰の手に?

 

感想

すべてのアマチュア音楽家へ送る物語

4人のピアニストがコンクールに挑戦する物語なので、音大に進まなかった人(音楽をかじった大多数の人間はそうだと思うけど)は共感できないかな?と思いきや、どっこい。ぜひにアマチュア音楽家にオススメしたい作品です。

コンクール出場者『コンテスタント』4人のうち、1人は28歳・妻子持ちの男性。この人は音大卒業後、楽器店に勤めるサラーリマンです。

私は一時期、音楽大学を目指していたことがあります。また、学生時代よりオーケストラ団体に所属しており、そこで出会うプロの方たちから聞いた話ですが、演奏活動で食っていける人は本当に一握りとのこと。

楽器店勤務は、音大卒業生の就職先として非常にメジャーなことだそうです。

そして、この男性「高島 明石」さんは、そんなボリュームゾーンに当てはまる、平凡な卒業生。既婚の読者は絶対にこの人に親近感を覚えるはず!

彼が追い求めるのは、「生活者の音楽」。突出した才能がある訳でもない、音楽以外の仕事を持った生活を営むものが「音楽をすること」とは?その意義を体現しています。

私は現在もアマチュアオーケストラに在籍しています。コロナ禍で行われた演奏会にて、指揮者の先生が「アマチュア音楽家がいるから、プロの音楽が成り立つ」というお話をしていたことを思い出しました。

アマで演奏する人は、プロの演奏を聴きに行く。そうしてプロの人たちの生活を支えているから、プロの演奏が全世界に届く。

私たちはプロの音楽家が紡ぐ音楽が聴きたいし、その余韻に浸りたい。どんな解釈をしたのか、それが自分の精神世界にどう影響するのか知りたい。そのためには、アマチュア音楽家が、音楽を愛し続けることが必要なんだと感銘を受けたエピソードでした。

食っていけないから、才能がないから。それだけで音楽をあきらめるのはもったいない。時間がなくても、ちょっと弾いてみる。すると、音色のみずみずしさや、自分の中にある表現したいという熱情がはじけて、心が一気に満たされる。音楽っていいなぁ、と、改めて納得するひと時。私たちアマチュアの音楽への愛は、決して無駄ではないのです。

 

聴く芸術を文学にするなんて!

本作には、ほかにも魅力的な登場人物が登場します。

風間塵やマサルの、風景や物語を見せるピアノ。 栄伝亜夜の、人生や普遍の摂理を語るピアノ。

すべて音楽です。

音楽は、耳で楽しむ芸術。それを、まさか文字で見て楽しむことができるなんて。恩田陸さんの頭の中はどうなっているのでしょう…!感嘆、感激。

音楽を愛するものにとって、他人がした曲の解釈を聞くのは喜びだと思いますが、そんな喜びがこの本には詰まっています。あ~、この曲をそう聴いたのね、そしてそう弾けるのね!という楽しみがあって、まるで本当に自分がコンサートを聴きに行ったよう。

 

実は青春群像劇

しかもただの音楽コンクール小説だけではおわりません。 4人のコンテスタントの成長と、その周りにいる人々の人生まで映し出されており、読後は非常にさわやかな気分になります。

今まで音楽をあまり聴いてこなかった方も、「音楽ってこんなものなんだ~」と楽しめる作品です。

音楽に対する姿勢を変えさせてくれた一冊でした。私も生涯、アマチュア音楽家として音楽を愛していきたいと思います!

すべての方にオススメです!

 

★★★★★(価値観を変えた傑作)

 

▼文庫版では上下巻に分かれています

 

知らぬ間に私も時間を奪われていた。『モモ』を読みました

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どんな本?

モモ / ミヒャエルエンデ 作。

「時間」をテーマにした、児童書であり哲学書。

この本から得られること

  • 時間の使い方を見直すきっかけ(心が豊かになる活動に時間を使いたい)

こんなアナタへおすすめしたい

  • いつも時間に追われている大人

 

あらすじ

廃墟となった円形劇場に住む、少女モモ。

モモがいると、なんだか優しくなれて、想像が豊かになって、毎日が楽しい。そんな不思議な力を持つモモは、街の人にとって大切な存在になっていきます。

ある日、街に「灰色の男たち」が現れ、街の人々の様子がおかしくなります。大人も子どもも、せかせかと、忙しくなっていくのです。「時間」を奪われた街の人たちを救うべく、モモは冒険に出ます。

 

すべての大人たちの物語

私たちは、毎日忙しく生きています。

「ちゃんとした暮らし」「良い暮らし」が幸せに繋がると信じて、いかに効率的に日々を過ごせるかを考えています。

さらに「しっかりした母に見られたい」「優しいママに見られたい」「オシャレな人に見られたい」といった自己実現欲求も加わって、ますます忙しい毎日です。

時間を盗まれた街の人々は、まさに現代に生きる私たち大人自身。

大人たちが時間を盗まれてから、子どもはこうこぼします。

「子供に構ってくれる大人がいなくなった。」

なんて心に突き刺さる、冷静な評論でしょうか。

 

「うまくやる」のが、カッコイイのか?

時間を短縮しようとすると、どうしても効率的な処理が求められます。

それが、俗にいう「うまくやっている」状態であり、「クール」でもあります。

しかし、一番最初に時間を盗まれた人を見て、モモの友人・ジジは
「どんなことにもヤツ一流の考えを持っていた(のに、今のヤツはそうではない)。」
と言います。

「うまくやる」と、画一的になってしまう。老いも若きも、エリートもそうでない人も、「その人なりの一流の考え」というのは尊い。どんな人の考えだって尊い。

なのに私たちは、一番効率的な思考を「カッコイイ」と思ってしまう。ああなりたいと思ってしまう。それって、豊かなんでしたっけ?

 

子どもとの時間を「無駄」だと思いたくない

お金を稼ぐこと、私というアイデンティティを確立するために没頭すること。それも立派です。

ですが、友人、コミュニティ、趣味、ぼーっとする時間は、果たして、無駄・浪費なのでしょうか?

家族や子どもと過ごす時間は?

本を読みたい、勉強したい、ブログ/インスタに投稿したい、オシャレをしたい、ダイエットがしたい…そのために、子どもと遊ぶ時間なんてない。って、突き詰めると、思ってたんです。認めたくないけど。

だけど本当は、子どもと遊んでいる時間を、「無駄な時間だ、身にも金にもならない、節約しなきゃ」と思いたくない。

子どもと過ごす時間に、意味なんて求めなくていい、ただそれだけでいい、って思いたい。

 

ママも自分の人生もがんばりたい

「マズローの欲求5段階」というものがあります。人間の欲求を5段階のピラミッドに表したものです。

最下層は、「生理的欲求」。人間が生きていくための根本的な欲求を指します。これが満たされたら、次の「安全の欲求」を求める。その次は「社会的欲求」、すなわち、どこかのコミュニティに属したいという考えです。その次が「承認欲求」。すべての欲求が満たされたら、頂点の「自己実現欲求」があります。人間は、次から次へと欲望が湧いてくる。そして最後の「自己実現欲求」は満たされるのが難しい、特に、私たち現役世代には。

だから、もっとがんばらなきゃって思っちゃうんです。効率的に時間を使って、捻出した時間でアイデンティティを確立しようと。だって、巷では、「時間がない、は、甘え。時間は作り出すものだ」と言われているんでしょう?

この欲求は本当に厄介だと思います。だって私たちは、「自分らしく、良く生きる」ことを目標に今まで育ってきたから。だけど、子どもを産んだ今、それより大事なものがあるって、本当は知っているんです。ただ、流れ来るSNSのフィードの前では、「私だけなにもやってない」と焦るしかなくて。

 

「モモ」は児童書ではありますが、私はこれからも何度も読み返すでしょう。今回はamazonオーディブルでの視聴でしたが、愛蔵版(紙)も購入したいと思います。大変オススメです。

 

★★★★★(価値観を変えた傑作)

 

育児に取り入れたい、自分を勇気づける力。『もしアドラーが上司だったら』を読みました

(画像:もしアドラーが上司だったら | PRESIDENT STORE (プレジデントストア)より)

 

どんな本?

キュートな上司「ドラさん」からアドラー心理学を学びながら成長するサクセスストーリー。

 

この本から得られること

  • 勇気
  • 自分と他人を分けて考える
  • 仕事も子育てもポジティブ思考に

こんなアナタへおすすめしたい

  • 若手社員
  • 管理職
  • 職場に停滞感がある
  • 子供にイライラしてしまう

 

「アドラー式子育て」を知って

2019年、アドラー心理学というものを知りました。

2019年度のペアレンティングアワード - 人気雑誌が選ぶ子育てトレンド )で「アドラー式子育て」が紹介されていたのがきっかけです。

ワーママにも慣れて仕事が忙しくなり、イヤイヤ期が始まった娘の相手にも疲れ、いつもイライラしていました。

この言葉だけメモって、「いつかアドラー心理学を調べよう」と誓ってもう3年経ってしまいました。

 

アドラー心理学とは

オーストリアの精神科医であるアルフレッド・アドラーが提唱した理論です。

心理学の分野ではフロイト・アドラー・ユングという3人が現代の心理療法を確立したといわれているようです。
3人ともオーストリア出身ですね。

余談ですが、フロイトは大作曲家であるグスタフ・マーラーを診察しています。

この辺りは映画「マーラー 君に捧げるアダージョ 」という映画に描かれているようです。

私はまだ見たことがないので、今度見てみたいなぁと思います。

この本では、アドラー心理学のキーワードとなるのが「勇気」と「共同体感覚」だと紹介されています。

 

勇気を持って困難を制す

困難を克服する活力を、アドラー心理学では勇気と呼びます。

そしてこの本では、まず「勇気を持つこと」を身に着けます。

答えのない課題、込み入った人間関係…困難な挑戦に果敢に取り組むには、なにが必要か。その土台にあるのが「勇気」です。

勇気を持つために必要なことは、

  • できていることや長所に注目する(「正の注目」をする)
  • 短所や失敗をいつまでも考えない(「負の注目」をしない)

この心の持ちようを「勇気付け」と呼び、この本では勇気付けができるように、いくつかの技術が紹介されています。

 

ネガティブな言葉かけ=勇気をくじく

ちなみに負の注目をすることは「勇気くじき」と言います。

以下のフレーズが何度も出てきます。

ダメだと思いながら頑張るのは、ブレーキを踏みながらアクセルを踏むようなもの。

私たちは負の注目をしがちなので、どうしたら正の注目ができるか?が焦点になります。

 

自己受容すること

正の注目をするためには、揺るぎない自分でないと怖くてできません。

自信をもって、自分は自分のままでいいんだ、ありのままでいいんだと思えること。

 

ありのままの自分を受け入れることを「自己受容」と言います。

ダメな自分も、卑屈にならず、真実を都合よく解釈せず、そのまま受け入れる。

失敗した時の方が闇堕ちして深く考えちゃいますが、そんな時は、あぁ、失敗しちゃったなー、と、ただ事実を認めるだけ。

自分はこれができてるから、次もできるはず。 たまたま失敗しちゃったけど、でも以前も、できなかったことに挑戦し続けたからできるようになった。

そういうマインドがあれば、また挑戦できます。

 

挑戦できる力の原点

何度でも挑戦できる力は、自己肯定感がある、自分に自信があることで湧いてきます。

 

平成20年度の東京都教職員研修センター「自尊感情や自己肯定感に関する研究」によると、青少年のマインドとして、

  • 意欲を行動に移す負担感が大きい(意欲はある)
  • 行動してみたが、失敗した絶望感から抜け出せず、再挑戦しようという意欲がわかない、あるいは行動できない

だそうです。

 

せっかく、なにかやろう、という意欲を持ってるのに、それを溜め込んじゃうのはとてももったいないです。

 

経験値が貯まってくると、行動することの難易度は下がって、代わりに意欲自体を見つけるのが難しくなると感じているので(ある程度惰性でできてしまう)、子どもや若手にはぜひ意欲を持ち続けてほしいなぁ。

 

なので、どうやったら自己受容できる(自己肯定感を高められる)か?が次の問題です。

 

機能価値と存在価値を分ける

  • 機能価値…能力や実績で測られる価値。比較される。
  • 存在価値…存在しているだけで発揮される価値。比較されることはない。

 

私たちはだれしも存在価値を持っていて、私という人間の存在価値は誰からの評価にもよらず、ゆるがず、当然にあるものということです。

 

こんな一節がありました。

言い換えれば、「Doing」と「Being」だ。

君は、ちょっとした仕事のやり方(Doing)が上手にできずに「機能価値を」うまく発揮できていないだけだ。でもそんなの訓練や経験でなんとでもなっていく。焦る必要なんてないし、自己否定する話ではない。

なのに、君は、君のもっと大切な「Being」つまり「存在価値」まで否定してしまっている。仕事がうまくいっていない人は人間としてもダメな存在、劣った存在だ」と自分で自分の人格まで否定してしまっている。それは、大間違いだ。

 

こう言ってもらえると、私っていていいんだ、と思えますよね。

ある程度の年齢になれば、存在価値は自分の生き方が証明します。愛してくれる家族や友達がいる、それは自分がそういう関係性を築いていたからだ、と。

 

だけどそうなる前までは、やっぱり無条件の愛情が必要だと思うのです。 この本でも、主人公があこがれる同期がアドラー心理学を体現しており、それを上司に尋ねると「ご両親の接し方がよかったのだろう」。

 

自分で存在価値を認めるためには他者からの無条件の愛情という根拠があってはじめて可能だと思います。

だから子供たちにも正の注目をしていきたいし、職場の若手にも同じまなざしを向けていきたい。

 

共同体感覚=同じ社会で生きている

この本で挙げていた、アドラー心理学のもう一つのキーワード「共同体感覚」

他人は敵ではなく同じ共同体なんだ、という感覚をいうらしいです。

 

人は弱い生き物だから共同体感覚がないと生きていけない。

人間は社会の中で生きているので、これは正しいと思いました。

 

私が特にしびれたのは、

「(共同体のために)見返りがなくても自分から始める。リーダーとは、自分から始められる人のことだ」という言葉です。

 

管理職をやっていた頃、チームメンバーの不満や突き上げに苦しい思いをしていました。彼らの発言にも一理あることがわかってしまうからです。

上から言われて急遽仕様変更。無茶な期日。文句を言いたくなるのもわかりますが、そこで迎合しては発展しないんですね。

 

まずはやってみる、その上で今後改めてもらいたい行動を伝える。ただ不平を言うだけでなくて、建設的な議論をする。

今までは「私の力じゃそこまで無理」と思っていましたが、復帰してからは「無理だと思っても、自分からやるのがリーダー」と思ってがんばれそうです。

 

感想と、取り入れたいこと

意外と手厳しい

アドラー心理学は、厳しい現実社会を生きる私たちに寄り添ってくれる、そんな学問だと思いました。

心の持ちようとしては、とても美しいんです。たとえば、

  • ありのままでよい(失敗しても問題ない)
  • できてるところに注目しよう
  • 人を称えよう

これだけの世界だったら、とても美しいですよね。

 

でも私たちが住んでるのは、おとぎ話の世界じゃない。

良い社会にするには利益を出さないと事業が存続できない。

だから仕事をするんです。成果が出なくても「ありのままでいいよ~Let it go~♪」は通用しない。

 

でも、だとしたら、やっぱり厳しく叱咤激励しないと成長できない…?

と、「0か100か」思考に陥りがちです。

 

そこのところ、主人公の上司であるドラさんは上手です。

心の持ちようと行動のとり方は違う、とはっきり分けて考えています。

言い換えれば、存在価値と機能価値を分けて評価しています。

 

部下に対して、ありのままの君が好きだと言っておきながら、(会社という共同体のために)ミスをしたので減点、と述べています。

 

また、「やりたいけどできない/やりたくないけどやらねば、は存在しない」とも言っています。

 

たとえば「ダイエットしたいけどケーキを食べたい」は、つまるところ「ケーキを食べたい」のだと。

その前段は単なる言い訳だと切り捨てています。

 

例として、憂鬱な仕事をやらなければならないとします。

 

本音を言うとやりたくないが、やらねばならない。
 →やらなくてもいいよ

やらないと先方や会社に迷惑がかかる
 →かかってもいいよ

自分の評価が下がるのが嫌だし…
 →「評価が下がるのが嫌」だからやる、んだよね?

という理屈。

 

これはキビシイなと思いました。

ただ、人はやらされていると思うとやる気を失って、自分がコントロールできていると思うとがんばれる生き物でもあるので、このマインドセットはぜひ持ち続けたいと思います。

どうせ同じく行動するなら、自ら好き好んでやってるんだ!と思う方が楽しいですしね!

 

子育てに取り入れたい

日本の子供たちの自己評価は、国際的に見て低いことがわかっています。*1

 

子どもたちがどういう進路を歩むかはわからないけれど、いつ、だれとでもコミュニケーションをとっていける人にはなってほしいと思います。

 

自尊感情、自己肯定感を育むためには以下の経験をさせるのが効果的とのこと。

目から鱗の部分もあったので、私に特に欠如していた部分は太字にして、今後育児に取り入れたいと思います。

 

意識して取り組みたいこと
  1. 自分への気付き
    自己決定させる、ルールや目標をもたせる
  2. 自分の役割
    役立っていることを実感させる、周りの人からの肯定的な評価を受ける場を設定する
  3. 自分の個性と多様な価値観
    自分の考えを大切にさせる、多様な価値観を理解させる
  4. 他者とのかかわりと感謝
    多様なかかわりを経験させる、周りの人に支えられていることを実感させる
  5. 自分の可能性
    できたことを実感させる、否定的な面に対する気持ちを切り替えさせる、他者との同様性に気付かせる

子どもに「こうしなさい」と親の価値観を伝えることは簡単で、一方、子どもの内省を促したり、子どもに気付かせたりするのは骨が折れます。

でもこの時間や、親の我慢が、将来の子どもを形作ると思って、根気強く、「これも重要な子育てだ」と思いながら、声掛けを続けたいです。

 

多様な価値観を理解させるには、「百聞は一見にしかず」だと思う

核家族であり、夫婦ともに同じ大学出身のわが家の難しいところは、「多様な価値観を理解させる」箇所。ともすれば同じ価値観の人間に囲まれがちです。

 

私は公立中高出身です。本当にいろんな子がいました。

せっかく同じ大学に進学したのに、家庭の事情ですぐに退学してしまった友達。その後のその子の運命。

あの日、あの時、もっと違う声かけができなかったかな。もっと福祉につなげてあげられなかったのかな。その後悔が、私の今後のやりたいことや夢につながっています。

 

子どもは今のところ、私立中高一貫校を受験予定です。

もちろんメリットを理解しての選択ですが、公立ほどの多様な価値観を持つ子どもと触れ合う機会は少ないでしょう。

 

世界はいろんな人間でできていて、誰一人排除してはいけないし、価値観が違う人間があることで社会や産業が発展してきた歴史があります。子供たちにもそれを肌で理解してもらいたい。なので、ここは意識していきたいところです。

 

集団でしか育めない精神がある

「周りの人からの肯定的な評価を受ける」「周りの人に支えられていることを実感させる」「他者との同様性に気付かせる」これらは、すべて集団の中でしか実感できないものです。

 

未就学児の今は、家族という小さな単位の中で声掛けをすることで、少しずつ芽生えさせていける。

でもこれから子どもは親の知らぬ世界に羽ばたきます、それは決定事項です。避けられない未来であります。

 

その時に、少しでも躊躇なく・不安なく飛び立てるように、小さなころから「初めての人と会う機会」「親以外の大人と会い、意見をする機会」を増やしたいです。

 

気づきをたくさんくれる本でした

仕事ではもちろん、子育てにおいても使えるマインドセットだと思います。

子どもを連れていきたい環境のイメージができてきたので、どの場がふさわしいか(初めての場所で、いろんな子がいて、意見交換ができる場があれば…)もう少し調べていきたいです。

 

 

★★★(★3:心の栄養になる)

 

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*1:東京都教職員研修センター「自尊感情や自己肯定感に関する研究」、p.4、https://www.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.lg.jp/09seika/reports/files/bulletin/h20/h20_01.pdf 

明けない夜はない、毎日生きていかなくちゃ。『老人と海』を読みました

 
アーネスト・ヘミングウェイの『老人と海』を読みました。

 

どんな本?

84日間不漁が続く老漁師が大魚と出会い、奮闘し、港まで帰る、人生万事塞翁が馬な物語。
 

この本から得られること

これが最後のチャンス!と思って頑張っても、そのチャンスを掴みきれないこともある。
でも、また明日はやってくる。生きなきゃいけない。それがつらい。
こんな夜を過ごすのは全世界で自分ひとりだけ…と思いがちですが、そうではない。この主人公のように、誰だって悔しい気持ちを抱えることはある。みんなにその夜は訪れる。
 
だから例えアンラッキーであっても、みじめに思わなくていいじゃない。
 

こんなアナタへおすすめしたい

・今がうまくいっていない
・中高年
・ノーベル文学賞受賞作品が読みたい
 

イケおじではないけれど…

イケおじ(イケてるおじさん)の話かと思い最初のページをめくったら、開口一番、

漁師は老いていた。

 

で、ええーー!?と脱力。で、結局、やっぱり終始イケおじではないです。くたびれている。
でも、目の鋭さ・魂の強さは天下一品。しかもハンパないメンタルタフネスです。
 
私はハッピーエンド大好き人間なので、このまま大魚を釣れてハッピーイエーーイ!(サンシャイン池崎の音量で)な展開を想像していたら、最後に悲劇が…。
人生とはかくも辛いものか。
それでも老人は、悲観しすぎることなく港につき、疲れた体を休めるのです。
 

自分をいじめすぎない

大きな失敗をしたり、恥ずかしい思いをしたり、大人になっても「もう今日は最悪!」という日はありますよね。
こんなにみじめなのは全世界で自分ひとりだけ…なんで私ってこんなにダメなんだ…と悲観したくなります。
 
でも、この老人に比べたら私の悲観なんてかわいいものかも。だってこの人、たぶんこの大物に命賭けてましたよ。
そのチャンスを掴みきれなかった。それでも、恨み言ひとずいわず、布団に入ってまた明日を迎える。
 
人間は、恥ずかしても、悲しくても、命ある限り生きていかなきゃいけない、そう思わないと生きていけない。
みんなそうやって生きているんだと思うんです。
すると、こんなつらい夜を過ごすのは自分ひとりじゃないと思えてくる。
さっさと寝てしまって、また次の日、一からがんばる、その生活の連続が「生きる」ということではないでしょうか。
 

漢のプライド

夫曰く、「男ならわかると思うんだけど、腕っ節の強さというか、体の強さ、力の強さというのは、いくつになっても負けたくないという思いがある」。男性とはそういう生き物らしいのです。
 
そんな中、主人公の老人はもはや何も持ちません。過去の栄光だって、84日間不漁という事実にかき消され、体力は衰え、周りから憐れまれる存在。
 
だけど漁師としての矜持は持っており、完全には枯れきっていない。
人にどう思われようが「自分はこうだ」という信念があればそれだけで生きられる、なんともハードボイルドな男です。
 

機能価値と存在価値の違い

たしかに周囲からの哀れみはありますが、それはただ、利益があがらないことに対するもののみであって、老人自身にダサいとか、早く引退したらいいのに、とかそういう感情はないんじゃないかなぁと思います。
 
むしろ、老人に対してはリスペクトの気持ちが多少あって、だから最後、港のみんなは優しかったんじゃないかなぁ、と。
それはきっと、この老人がいつまでも等身大だからでしょう。
等身大でいられる=自分に自信があるんだと思います。
それは過去の実績があってこそ。
 
私もこれから年をとって、肉体的にできないことも増えてくるかもしれませんが、魂は良くありたいものです。
 

初ヘミングウェイ作品でした

本作はもちろん、彼の著作は感情がダイレクトには描かれていない点で「ハードボイルド」と評されることが多いそう。
たしかに、内面の描写は少ないです。この作品では、老人が朝起きて漁に出て帰ってくるまでの出来事を淡々と表現していて、精神世界といえば途中で気が遠くなった時に過去を反芻する程度。
 
ただそれだけなのに、そこから人間という肉体や生命の美しさ、海や自然への敬愛の念をしっかりと読者に感じさせるところはさすが。
 
(もはや前時代的価値観かもしれない)漢(おとこ)の生き様をハードボイルド的に表現しながら、ヘミングウェイの主義を融合した点で上手い作品だな、さすがはノーベル賞受賞作と思いました。
 
 

 

★★(★2:楽しめる)

2018年に読んで面白かった本3選

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暦の上では春になりました、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今更ですが2018年に読んだ本で面白かったものを振り返っていたら、ワーママの悩みのタネ「子育て・仕事・住まい」に収れんしていて、我ながら面白いなぁと思ったのでした。
ぜひレビューさせてください。

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運命に逆らわない。『とっぴんぱらりの風太郎』を読みました

誰にも雇われず仕事がないプータロー忍者、「風太郎」の、大阪冬の陣・夏の陣を巡る物語。
……と聞くと「なんだ、ただの時代小説か」という印象がありますが、ここに「妖のひょうたん」と「個性豊かな登場人物」が加わることで、鮮やかな「忍者活劇ファンタジー」ができあがるのです。

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